中国語本質講座第七回:どのような基準で中国語の教材を選ぶと失敗しないのか?

~私(阿部)がゼロから4ヶ月で中国語の原書と新聞を読みこなせるようになった 中国語教材の選び方とは?~

今回は、私が当時SARSの真っ只中2003年3月31日に

中国に降り立った日の翌日に、いきなりHSK8級合格(新HSK6級高得点)の調査を

開始した際の行動について、あなたに話そうと思ってます。




ちょうど10年前のこのころ

SARSで授業が停止していたのが、やっと明けたころでした。

大使館からも各国帰国令状みたいなのが発せられて、

1000人以上いる留学生は、のこった30人程度。



残った留学生たちの間でも、誰かが咳きをすると、

「おまえSARSじゃないだろうな…」という疑心暗鬼状態。


みんな、続々と帰ってきたときには、


「おまえらが自分の国で遊んでいるうちに、俺はその分、

やれることをやっといたぜ。」と。


「末代皇妃」というドラマにも出演しました。


と、まあ、その話は置いておいて、

まず、北京外国語大学につき、留学手続きを済ませた私は、

大学側からテキストが支給されました。



ペラペラめくっていると、ある図が載っていました。


「ん?なにやら北京語言大学では、留学生用の

カリキュラムがあるみたいだ。」


で、右には図があって、左にはこれまた何やら

カリキュラム教材の名前が内容が載っている。



これでHSKを作成している語言大の学習大綱の大体は

つかめたわけです。


そんで、後から知ったことでは、カリキュラムごとに

HSKに対応するレベルがある。


その図が載っているメイン教材の裏表紙を見ると、

カリキュラム教材が箇条書きに書いてある。


しかも、今の自分の教材がその箇条書きの中で

赤く記されている。


「あなたは今、このレベルにいますよ。」


これみて思ったんですね。


ああ、なるほど、語言大のカリキュラムなんだなと。


さらに、上の大綱によると、

中級からは新聞閲読などに入るわけです。


これらを照らし合わせて、「なるほど、この初級シリーズの教材を

終えれば、新聞や原書を閲読できるレベルに達するんだな。」

と知ったわけです。



「知る」というのは強力です。



この情報をもとに大綱教材を選択し、

1日1課くらいのペースでこなしていって、

ゼロからスタートしたときは、漢字の羅列にしかみえなかった

中国語の新聞が、初級教材を独学でこなした4ヵ月後には、

すでに読めるようになっていた、中国語の小説が読めるように

なっていた、と、こういうわけなんです。



以上の私の行動は、意識してとった行動です。

まず、メインになっている授業の教材を選んで、

その序の部分に、まず目をとおした、という行動です。



本選びするとき、これ、私の習慣なんですね。

この習慣どこから来ているのかというと、

10数年前の私の小論文の恩師の言葉。



私:「先生、小論文を書くのに必要な知識、どうやって収集

すればいいでしょうか?」


先生:「自分にとって良い、と感じたり、信頼がおけると感じた

本を見つけたら、その本から広げていけばいい。その本の中の

巻末に載っている参考文献とかから選んで広げていけばいいんだよ。」



高橋廣敏先生の言葉です(先生は10数年前の当時34歳だったと思

います)。


現在、代ゼミ現代文でTOP3に入るサテライト講座を担当

なさっている先生です。


高橋廣敏「必然性と偶然性」動画講座<



多くの人は、教材を選ぶときに、自分で書店に

いって、「あっ、これよさそうだな。これ買おうか。」

といったように、自分で選んでしまっています。



第三回のエビングハウス忘却曲線で紹介した熊本大の学科

トップ合格した彼、三浪していてずっと失敗していたわけですが、

六月の中検2級に合格した後、こんなメールを送ってきたんですね。



彼:「阿部さん、中国語検定2級合格しました!再受験、もう一度

挑戦しようと思います。受験勉強方法を教えていただけないでしょう

か?」



私:「ああ、じゃあ、このサイトの方針に従って独学進めていくと

いいよ。」



そして、3浪して失敗し受験をあきらめていた彼は、

1年3ヶ月のブランクを経た後、

そのサイトの方針に従って学習を進め8ヵ月後に

国立大学科TOP合格という結果を出しました。




更に、その合格した年の四月に彼から、またメールをもらいました。



彼:「現在、TOEIC600点くらいですが、1年で900点

目指そうと思います。参考書紹介していただけないでしょうか。」


私:「1年でTOEIC900なんて目標が低すぎです。こんなものは

半年でとって下さい。一冊参考書を紹介しますね。」



そして、彼に約1000円のTOEIC攻略本一冊を紹介し、

彼、4か月後の8月でしたか、TOEIC875点マークしていました

ね。





考えてみると、奇妙なものです。



高橋先生のあの言葉を10数年前に偶然聞くことがなかったら、

私は8年前の中国語学習を開始するとき、

語言大のテキストから広げていくという戦略を

おそらくとっていなかったでしょう。



そうすれば、ゼロから9ヶ月でHSK8級に合格するという

結果も出せなかったでしょう。



その結果が出せなければ、3浪失敗していた彼に中国語の

学習方法を伝えることはできなかったでしょう。



そうすれば、彼は2級に短期で受かることはなかったでしょう。

そして、2級合格した後、

「受験勉強方法を教えてくれませんか?」という彼の言葉は

きっと出てこなかったでしょう。



そうすれば、彼が熊本大の電子工学学科TOP合格していることも

なかったでしょう。


そして、大学入学4か月後にTOEIC875点をマークする

ということもなかったでしょう。




彼は私からの情報をまた誰かに伝えて、その誰かを

成功に導いていくことになるでしょう。



情報戦は、極論すると自分だけでなく、他人の一生をも左右してくる。




この局地戦が。いかに責任重大であるか。




「その分野に精通した人の手の入った情報を選択していく。」



情報の洪水で溢れる現代社会。



この情報の洪水の問題について、

行動経済学という分野で面白い話があります。

「選択のパラドックス」という話です。


<実験>

スーパーマーケットで6種類および24種類のジャムを並べて、

客の動向を観察する。


上記二つの陳列テーブルが置かれている通路を通った242人の客のうち、

40%が6種類のジャムの陳列テーブルを訪れたのに対して、

残りの60%の客は24種類のジャムの陳列テーブルを訪れた。


<実験結果>

6種類のジャムの陳列テーブルを訪れた客のうち、実際に購入したのは

30%であったが、24種類のジャムの陳列テーブルを訪れた客のうち実際に

購入したのはたった3%にすぎなかった。


つまり、6種類のジャムを置いた陳列テーブルを訪れた97人のうち、

29人が実際に購入に至った一方で、24種類のジャムを置いた陳列

テーブルを訪れた145人のうち、4人のみが実際の購入に至った。


<考察>

選択肢の多さは、逆に人が行動を起こす際の障害となりうる。

これが情報化社会で生きる私たちが今現在直面している問題の「本質」

だといえるでしょう。




次回は語言大学大綱教材編集者である教授の「意図」と、

「日本中国語教育界の七不思議」、この二つをあなたに

話していきます。


中国語教育の最高学府である北京語言大学によって作成された30年の歴史がある大綱教材とは?


この大綱を知ると、

語学の学習順序を空から鷹の目の視点で見渡すことができるようになります。


あなたが今行なっている学習が、

「聴く、話す、読む、書く」という実務に必要な中国語スキルに どのようにつながってくるのか、これが見えてくるようになります。

→中国語本質講座第八回へ進む


ではまた。



阿部拝

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